10/01/2009

魔王

先日、雨の中、郊外の家路に向かう私の耳に、エルケーニッヒ(魔王)の歌が聞こえた。近くの音大の学生だろうか。久し振りに耳にする、そのシューベルトの曲に、全身が震えた。
このゲーテの詩は、不吉、不安、闇、そして恐怖で満たされているにも関わらず、聴く者の魂を根底から揺さぶる。
何故だろう?
自然の摂理と人間社会(政治や経済)の、矛盾と亀裂の中から、突如として発火して燃え上がる、この煌めき。
私は、思った。
これこそ、芸術の原点ではないだろうか?

いま、コンテンポラリーアートにたずさわっている作家、評論家、学芸員、美術商、そして収集家で、こんな煌めきを体験できる人は、幸いである。

追伸 :
このブログを書いている時、日本の代表的バリトン、中山悌一の訃報が入った。
この曲を歌う氏の事を、私は印象的に記憶している。


© He Min(フーミン)
「左岸」175×210 cm


賀敏 作品展 『它城 Off City』
2009年10月2日(金)〜10月27日(火) 日・月・祝日休廊
開廊時間:10:30〜18:30(土〜17:30)