8/15/2008

現代中国美術展を開催して思ったこと

ツァイト・フォトの石原です。


 1970年代後半から、一挙に開放経済に向った中国ではあるが、
現代美術に関しては、最初から全て「ゴー」ということではなかった。

最初の革新的な芸術家集団である「星星画会」のメンバーの多くは、
よく知られているように、その表現を本国中国で行うことはできなかったので、
欧米や日本に脱出して制作活動に入った。
続く「85美術運動」の人たちは中国に留まったものの、
時には体制規則との間で激しいやりとりが行われもした。
そして、また、彼らも「星星画会」のメンバーと同様、
天安門以来その多くが国を離れている。


「抑圧があるから生命力の輝きが誕生するのだ」
と他人事を言う論者もいるが、アーティストたち本人にとっては、
その都度その都度が、自らの存在をかけた重大な瞬間なのである。


私は数年前、国際交流基金の会合で、
最初に海外に跳び出していったアーティスト、蔡國強と会った。
その時氏は中国でのG7の際に政府から、
中国が生んだ世界的なアーティストとして帰国を要請され、
氏のシンボルでもある花火を打ち上げて欲しいと命令を受けていた。
私は氏に向って
「貴方の帰国要請無視は、更に対抗作家としての名誉を増幅させますね?」
と問いかけた。
ところが、氏の答えは思いかげないものであった。

「私は中国に花火を上げに戻ります。こんな好機でもないとなかなか中国には帰れませんからね。」

そう言って笑った。
そんな氏は堕落した作家なのか、それともたくましき実存主義者なのか?
その時の私は一瞬戸惑った。


もちろん、今なら答えはすぐに決まっている。
彼は偉大なる実存主義のアーティストだ。
中国人作家のこの強靭な精神力とパワーは、どこかの国の青白きインテリ諸君も見習った方が良さそうである。


石原悦郎

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